近年、安定と言われる『正社員』という肩書きを捨てて、『派遣』という雇用形態に挑戦する薬剤師が増加しています。
なぜ今、派遣薬剤師になるのか。将来に不安はないのか。
当記事では、派遣薬剤師の働き方、収入、スキル、年齢、これからのキャリアなどについて解説します。
派遣薬剤師をするメリット
近年、派遣薬剤師が人気になっている理由は主に以下の3つの理由からと考えられています。
- 正社員以上の高収入
- 自由自在に働ける
- 福利厚生の充実さ
この3つのメリットが具体的にどのくらいなのか、実際に派遣で勤務する薬剤師の例を元に解説します。
他言厳禁の派遣薬剤師の給料とは
意外と身近にいる派遣薬剤師。私の店舗で働く派遣薬剤師ってどのくらいもらっているんだろう・・・。
そう思ったことはありませんか?
とはいっても、なかなか教えてくれない派遣薬剤師の時給。なぜなら派遣薬剤師は自身がもらっている時給を店舗スタッフには言ってはいけないことになっているんです。
その理由はもちろん、派遣の薬剤師の報酬が高すぎるため。
ときどき薬剤師求人サイトなどで『派遣時給3000円以上可能!』『派遣時給4000円!』と掲載されているのを見たことがありませんか?
「どうせつり広告でしょ?」
「田舎の求人なんじゃない?」
「いや、私の店舗でそんなにもらっているはずがない。」
そう思うかもしれませんが、東京や大阪などの都市部から通える少しだけ郊外の地域においても、時給4000円以上で募集する薬局もあります。
参考までに、時給3500円で8時間勤務し、1日30分ずつ残業すると仮定すると、1ヶ月20日の勤務で月収はおよそ60万円、年収は725万円になります。
計算式)時給3500×8時間+3500円×1.25×0.5時間×20日×12ヶ月=年収725万円
さらに、年収だけではなく、注目すべき点は『休日日数』です。
上の計算では年間休日日数120日として計算しています。さらに勤務時間は170時間/月としています。
正社員のドラッグストア薬剤師などの年収は600万円以上とそこそこいいものの、年間休日108日であったりと、派遣薬剤師のそれとは比較にもならないほどです。
派遣なのに!?正社員も驚きの福利厚生
派遣って福利厚生はどうなの?
世間一般の派遣社員の福利厚生は、あまりいいイメージがありませんよね。
しかし、派遣薬剤師の福利厚生は大変充実しています。
以下は、「ファルマスタッフ」を運営する株式会社メディカルリソースの派遣薬剤師の福利厚生です。
・社会保険(1週間の所定労働時間が20時間以上で、契約期間が所定の期間を超える場合に加入)
・雇用保険(週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上就業が見込まれる場合)
・労災保険
・薬剤師賠償責任保険
・有給休暇
・定期健康診断(年1回)
・スポーツクラブ法人料金で利用可能
・健保の保養所が利用可能(東京薬業健康保険組合)
雇用保険も加入できるということは、派遣をしばらくお休みしようとした時、失業手当をもらえるということになります。
正社員時の福利厚生と比較しても大きい差は見られないと思います。
一方で、近年薬剤師派遣事業を開始した『薬剤師転職ドットコム』を運営する株式会社メディウェル(アインホールディングスグループ)の福利厚生は以下となります。
・社会保険(1週間の所定労働時間が20時間以上で、契約期間が所定の期間を超える場合に加入)
・雇用保険(週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上就業が見込まれる場合)
・労災保険
・薬剤師賠償責任保険
・有給休暇
・定期健康診断(年1回)
・産前産後休暇
・育児休暇
・介護休暇
・研修サポート(認定薬剤師維持のために必要な費用)
・ストレスチェック(年1回、基準を満たした方対象)
・スポーツクラブ法人料金で利用可能
・健保の施設が利用可能(東京化粧品健康組合)
こちらも正社員と同様、非常に福利厚生が充実しているのがわかります。
特に、産前産後休暇や育児休暇が保証されていると、若い世代でも安心して派遣で働くことができますよね。
もちろん有給休暇もあります。
ほとんどの派遣会社では半年働けば、有給が10日付与されて、1年ごとに1日ずつ増えていきます。
もともと、時給が高い派遣薬剤師なので、この有給を取得する優越感はとても高いです。
自由すぎる派遣薬剤師の働き方
派遣薬剤師は、「勤務地域」や「期間」を自由に選ぶことができます。
- 電車通勤が苦痛なので、家から自転車圏内の薬局がいい。
- 観光地やリゾートなど、穏やかな場所で働きたい。
- 青山や代官山のような都会のお洒落な地域で働いてみたい。
「どこで働こうか。」「しばらく海外留学したい。」勤務地や会社の方針に縛られず、自由に働けるのが派遣薬剤師の魅力。
- 1週間に1日程度「単発派遣」で働く
- 転職が決まるまでの繋ぎで1〜2ヶ月働く
- 開業資金を貯めたいので、数年に渡り継続して働く
1日単位のショートワーク、1〜2ヶ月程度のミドルワーク、数年のロングワークなど自身のライフスタイルに合わせて働くことができるのも、派遣薬剤師の魅力です。
全国の様々な地域で働きながら旅をする薬剤師や、1点集中型で高時給でガッツリ稼いで海外へ留学する薬剤師など、いろんなタイプの派遣薬剤師がいます。
派遣薬剤師はどのような仕事を任されるのか
薬局の規模や応需科目、会社の方針にもよりますが、基本的には派遣契約の期間によって任される仕事は異なってくることが多いです。
単発〜1ヶ月程度の派遣
1日から数日の単発派遣ならほとんどの場合、『処方監査』『服薬指導』の2つを依頼される場合が多い。
ピッキングやその他の調剤は事務や常勤の薬剤師がほとんどやってくれる場合が多く、派遣の薬剤師はひたすら監査・投薬・薬歴作成の繰り返し。
余った時間に、すすんで予製の作成を手伝ったり、雑用すると薬局側からの評価がぐんと上がりますよ。
2ヶ月以上の長期の派遣
2ヶ月を超えるような比較的長めの派遣の場合は、薬局の一連の仕事全てを任されることが多いです。業務内容はほとんど正社員と変わらないと思ってください。
管理薬剤師とはなりませんが、勤務する薬局によっては実質管理薬剤師的な位置になることもしばしば。
派遣をする薬剤師はどんな人?
派遣薬剤師をする年齢層
基本的に派遣で働く薬剤師は20〜30代の若い薬剤師に多い。
特に、一通り調剤薬局の仕事を覚えた20代後半から30代前半にかけてがピークと言われていいます。
ついで、子供がある程度育った40代の薬剤師も派遣に挑戦する人が多い。皆さんの中にも出会ったことがあるのではないでしょうか。
こういった、ママさん薬剤師が派遣をするのは、時給2000円前後給与でパート勤務するより、派遣で働いた方が効率が良いといった理由からです。
では、50代はどうでしょうか。
結論から言いますと、多くはないものの存在はします。
ただ、薬局側から年齢制限を設けている場合のあるので、需要は少々低くなるようです。
派遣薬剤師は男女ともに活躍していますが、年配の派遣薬剤師は女性の方が割合多くなります。
派遣薬剤師に求められるレベルはどのくらい?
派遣薬剤師はあくまで欠員店舗の補充であるので、高い専門性が求められていないことが多い。
特殊な内容やイレギュラーな処方箋であれば、場慣れしている常勤のスタッフが対応してくれるので心配する必要はありません。
ただし、派遣薬剤師は基本的に即戦力として期待されているので、全ての科目に精通し、薬剤師経験3年程度のレベルに達している必要があります。
ゆえに、派遣薬剤師は過去に管理薬剤師や薬局長をやってきた人も多いんです。
ただ、元々の知識や地頭の良さは人それぞれですので、2年目には派遣薬剤師になる人もいます。
ちなみに派遣される薬局のメイン応需科目を選ぶことはできますが、今後、勤務可能な薬局が限られてしまうので、やはり全ての科目に精通しておいた方が良いでしょう。