先日薬剤師のエディさん(仮名当時30歳)は沖縄県の離島での4年間の調剤薬局での勤務を終え、地元の大阪へ帰郷しました。
「魅力いっぱいで最高」と言っていた離島から、なせ大阪に帰ってきたのでしょうか。
エディさんにその理由を尋ねたところ、「離島でこのまま働いていたら私の人生終わってしまうかもしれない」と思ったからのようです。
今回の記事では離島薬剤師として4年間薬剤師をしたエディさんに離島での働き方や生活、人間関係、転職活動や給与そしてなぜ大阪に帰ってきたのかを述べていただきました。
なぜ離島で薬剤師をしようと思ったのか
私が離島で薬剤師をしようとした単純な理由
私は新卒からずっと大阪市内の調剤薬局で働いていました。毎日のように単調に調剤して、ほぼマニュアル通りに服薬指導をするという一連の流れに飽きていました。
しかも、家から電車で1時間以上かけて職場に通勤していたので、体力的にも疲弊しており、どこか近場の職場に転職を考えていました。ちなみに当時勤務していた薬局は薬剤師3人体制の大手調剤薬局です。役職は薬局長(管理薬剤師)で、少し本社の仕事もしていました。
何か大きなビジネスを起こしたいな〜と漠然と考えていたものの、当時の私は調剤薬局で働く能力しかなかったため、とりあえずで転職先も調剤薬局を考えていたのですが、結局環境を変えても同じことの繰り返しが起こるのだろうと思っていました。
のちに沖縄や離島に興味を持つ私は、もともと自然やアウトドアが大好きで、旅が好きで、時間があれば東南アジアや沖縄に出かけていました。
旅先で沖縄に行った時、さまざまなところで薬局を見かけ、「薬剤師の需要もあるのかな」と思いインターネットで検索してみたら、思いのほか沖縄と薬剤師に関する記事(おきなわ物語、離島薬剤師どっとこむ沖縄など)があり、また、薬剤師の募集があることを知りました。
あるとき大学の友人に「沖縄とか離島で薬剤師をやってみようかな」と冗談まじりに話してみたところ、
「めっちゃ面白そうだね。独身のお前が羨ましいわ。」
とまさかの返答。
「オレめっちゃ石垣島好きなんだよね。海は青いし、星は綺麗だし。しかも田舎って給料も高いんでしょ?」
「まあ、そうなんだけど・・・。」
私には家族もいないし、当時の薬局での仕事に対して特に思い入れもない。
それなら自然あふれる離島で一度働いてみてもいいじゃないかと思い、いくつかの離島の中から選んだ結果、沖縄県の石垣島に行くことをあっさり決めました。誰も知り合いなんていない石垣島に。
離島の転職活動は割と簡単
早速インターネットでいくつかの求人検索サイトで求人を見ていると、石垣島の薬局で募集がありました。
2つの薬剤師求人サイトでそれぞれ1つずつ気になる求人があったので、それぞれに応募してみると、なんと両方とも募集は終了しているとのこと。
「おいおい、掲載されているのに、そりゃねえぜ」と思っていましたが、求人サイトを運営するそれぞれの薬剤師紹介会社のコンサルタントに現在募集をしている薬局をサーチしていただき、それぞれ紹介会社から薬局1店舗ずつ紹介され、計2つの薬局と面談することになりました。(登録して何日後かに募集が入ったこともあったので、転職活動をする少し前に登録したほうがいいと思いました。)
2つの紹介会社を利用していたので、面談スケジュールの調整などやり取りとか結構大変なのかなと思いましたが、スムーズに調整してくれて、1日間で2つの薬局を見学と面談することになりました(実際は2〜3日間程度滞在)。
紹介会社のコンサルタントも同行してくれるようなことを言ってた気がするのですが、私は単独で石垣島に乗り込み調整していただいたスケジュールに合わせて面談しました。(航空券は自分で確保。領収書は保管。)
ちなみに石垣島の薬局の大部分は、南部の市街地にあるので、空港から離島ターミナルまでシャトルバスで行き、そこからタクシーで周るのが良いと思います。石垣島のタクシーは初乗りが安くて460円なのですが、運転は予想以上にのんびりしています(笑)
私はスーツで面接に行きましたが島ではスーツの人があまりいないので、少しうきます。(決して悪いわけではないのですが。)
沖縄の独自の正装「かりゆしウェア」(下にAmazonと楽天のリンク貼っておきます)を着用して面接に挑むと印象が良いので、男性の場合は市街地のお土産屋さんかインターネットで予め購入しておくと良いでしょう。
結構いろんな種類があるので、選び方に関しては外部リンクを参照にしてください。こんなんでフォーマルなの?と思う柄ですが、沖縄ではビジネスの場で着て全く問題ありません。(というよりむしろ好印象だと思います)
女性もかりゆしウェアでも良いのですが、無理に気なくても良いと思います。
面談や見学は離島の薬局も内地の薬局もほとんど変わりません。ただ、面接場所が薬局の待合室だったので、その辺りは少しラフ感が感じられますね。
いずれの薬局も当日中に採用の報告があり、夜に飲みのお誘いがありましたが、私用があったので、断りました。
基本的に沖縄ではお酒の席に誘われることが多いようなので、もし誘われた場合は、今後経営者やスタッフと仲良くやっていくためにも参加された方がいいと思います。島では「飲みニケーション」で仲良くなりますので。
ちなみに、島までの航空券やタクシー代などの交通費は、とりあえずは自前でしたが、入社した場合は薬局側が後で振り込んでくれます。
離島薬剤師の給与は高い?福利厚生は?
離島薬剤師の給与に関して聞かれることが多いのですが、石垣島には調剤薬局が30件ほどしかないので、ここで詳細に言ってしまうと、薬局側が特定されて今後迷惑がかかる可能性があるので、詳細な金額やどの薬局かに関しては少しだけ濁したいと思います。
私の年齢は20代後半で非管理薬剤師でした。いずれの薬局でも勤務時間は月に150〜160時間程度で年収530万円〜600万円の提示でした。
これに別途で、管理薬剤師は手当80〜100万円程度や家賃補助などがつきます。石垣島は割と家賃ベースが高いので助かります。
また、薬局によってはスクーバダイビングやスノーケリングが無料の薬局などもありましたし、頻繁に高級焼肉(石垣牛)を食べにいく薬剤師も島にはいましたので離島の薬局の福利厚生の充実さには大変驚かされました。
離島の生活はどうだろうか 〜4年間の実際の生活体験談〜
運転免許があったほうが離島は楽しい
石垣島は車社会です。薬局自体は市街地に位置している店舗がほとんどなので、自転車が運転できれば特に生活で困ることはないのですが、休日にふと遠出するときに車は必要になるので運転免許はあったほうがいいと思います。
ちなみに当時の私はペーパーゴールド免許でしたが、石垣島で軽自動車を購入し、いっぱい運転しました。島には私と同じく運転があまり上手でない人がいっぱいいます(笑)練習場所にはピッタリな環境。運転に慣れた私は大阪に戻った今も運転しています。
p.s.〜石垣島は中古車が比較的高いので、内地で購入してフェリーで運ぶことをお勧めします。
石垣島の大自然に囲まれて
石垣島で暮らせてよかったな〜と思うのはやはり、この大自然です。
風情ある石垣と赤い屋根でできた家々とその街並み。
カラフルな魚が泳ぐのが見える美しく透き通った青い海。
仕事を終えて家に帰れば、水平線に沈む夕日を窓から眺め、夜になれば満点の星空。
私のいた石垣島では年中天の川が観れるほどで、夜な夜なさとうきび畑の畑道を車で走らせると、天然のプラネタリウムがそこにはあります。観光客などは整備された展望台で見ている人が多いですね。
また、一年中温暖な気候なので、その美しい星空を寝そべって鑑賞できます。
ちなみにですが、石垣島の夏は大阪より暑くなりません。冬では長袖1枚かジャケット1枚羽織る程度です。年間の気温差がないので過ごしやすいんです。意外ですよね。
過ごしやすい石垣島での生活
石垣島で生活をしていて何か不便だなとかつまらないなと思うことはほとんどありませんでした。
確かに都会の高い建物にいろんな店舗が入ったショッピング施設などはありませんが、イオンは数店舗ありますし、ダイソーもドンキホーテもありますので、生活必需品を購入する上で困ることはありません。
ただ、映画館や水族館、遊園地のような娯楽施設はありません。しかし、なんと言っても広大な『大自然』という娯楽施設があるので物足りないな〜と思ったことは一度もありません。(映画館は欲しいと思ったこともあったり・・・笑)
外食も大変充実しています。
観光地であるので、島野菜や南国フルーツを使った料理を提供するおしゃれなカフェや地元のブランド牛「石垣牛」を使った焼肉屋、島魚を使った寿司屋、泡盛やオリオンビールで盛り上がる居酒屋などなんでもあります。ちなみに松坂牛などを代表とするブランド牛の子牛はもともと石垣島や隣の黒島などで育てられているんですよ。
調剤薬局における離島の薬剤師の仕事に関して
薬局での勤務に関しては内地の薬局とそんなに変わらないと思います。
処方箋をもらって調剤して服薬指導をする。ただ、内地と比べて患者さんや卸業者さんとの距離は非常に近いです。
薬剤師にもよると思いますが、投薬時では服薬指導以外に雑談が多い。むしろDo処方なら雑談の方がほとんど。雑談から得られる情報量はかなりあるので、お薬とは関係のないお話は私は非常に重要だと思います。
また、患者さんと道で会ったら普通に挨拶しますし、夜な夜な飲みに行ったりもします。
石垣島は子供も多いのですが、遊んでいてとっても楽しかったです。公私分けるべきと考えるかもしれませんが、離島に関しては分けなくてもいいと思います。むしろそっちの方が楽しく過ごせます。
また、いろんな医師と接する機会がありました。ものすごく優しく、個性があり、面白い人が多い印象です。飲みに行ったり、一緒にイベントに参加もしました。
人脈で大小様々なイベントに参加したり、薬剤師によっては野球サークルやサッカーサークルに参加していました。その他のサークルもいっぱいあり、市内の大会に出場している薬剤師もいました。
石垣島はお祭りも多く、石垣島カーニバルや星空祭りなど、BIGINや夏川りみさんも唄ってくれます。
そういえば、過去にB'z がゲリラでコンサートを行ったこともあるようです。(すごすぎませんか?)
また、有名芸能人(有名芸人から俳優まで)もプライベートで観光でよくいらっしゃいます。(と言いますか気軽に話しかけてくれます笑)
とりあえず仕事でストレスを感じたことはほとんどありませんでした。
離島で4年働いた。私に残ったものは何だろう
不満のない離島薬剤師生活だったけれど
こう語ってみると、島の生活に一切の不満もないように見えますよね。
確かにストレスに感じることは何一つありませんでした。
みんな優しいし、陽気だし、人生に急いでいる感じもありません。ストレスって何だろうと。
そんな私にとって楽しすぎる石垣島なのに何で内地(大阪)へ帰ろうと思ったかと言いますと、
何も成長を感じられなくなってしまったためです。
ちなみに薬剤師としての成長ではありません。
薬剤師の勉強は離島でもできますし、eラーニングで情報のアップデートは容易です。
勉強会も結構あります。薬剤師会もあるので、加入している薬局はその集まりもあります。医業種連携の勉強会も任意参加であります。
いったいなんの成長ができなくなったかは後述する通りです。
薬剤師が離島に行ったらどうなるのか
このままでは私は薬剤師のまま〜離島を去る覚悟
勢いで離島に来たものの、私は学生時代から薬剤師以外のビジネスを模索していました。
就活はせず、とりあえず薬剤師しながら考えていこう程度に。当時の私には根拠のない自信しかありませんでした。(今は根拠のある不安しかありませんが笑)
もちろん、離島でも起業はできるものですが、今ほどオンラインは盛んではありませんでしたし、しっかりビジネス展開を考えるなら東京のような猛者が集まるような環境で1から修行する必要があるなと思いました。
このまま過ごしたら、私は一生薬剤師のままだ・・・
もちろん、薬剤師という職業を否定しているわけではなく、むしろ誇りに思い日々仕事に励む薬剤師はすごいと思っています。
しかし、私は私。薬剤師になりたくて薬学部に入ったわけではないし、ただ薬学を勉強したかっただけではないか!
私はすぐに社長へ連絡し、退職の旨を伝え、3ヶ月後に大阪に戻り、その後東京の企業に就職しました。
もし薬剤師を続けるなら離島
最後になりましたが、結局薬剤師が離島で働いたらどうなるのかと申しますと。
人生最高になる。
まさにこれです。この記事のタイトルでは「人生が終わる」とほざいてしましたが、決してそんなことはありません。
だってストレスないんですもの。毎日が最高でした。
調剤薬局での勤務も薬剤師をしている感じがありましたし、
患者から質問されてもしわからないことがあったら、書籍やpubmed検索したりして患者のために一生懸命になれました。
もし、今後薬剤師を続けるなら絶対に離島薬剤師がいいと思えました。
ヤクラボ編集部より
さて、今回の記事内容は離島で薬剤師を経験したエディさんのお話でした。
エディさんは結局、離島での薬剤師生活があまりに良過ぎて離島を去って薬剤師を辞めていくというストイックな生き方を選びましたが、薬剤師として生きるなら離島に行くことを強く勧めていました。
薬剤師以外にも様々な人が離島や沖縄に興味を持っています。大学生や20〜30代の方なんかはリゾートバイトで来島する方も多いです。
沖縄県はまだまだ薬剤師が足りていないと聞きます。八重山諸島の離島でも募集はしていますが、そんなに枠はないと思います。その他の離島は相変わらず募集は多いですが。
新しい人生を始めるために、一歩踏み出してはいかがでしょうか。
ヤクラボでご紹介している薬剤師紹介会社は離島への転職も協力してくれます。ぜひ活用してみてください。