薬剤師の求人検索サイトに掲載されている求人に応募したものの、「その求人の募集はすでに終了しています」とサイト運営から言われた経験はありませんか?
そもそも「ほんとに求人なんてあるの?」と思ったことがあるのではないでしょうか。
結果から申し上げますと、大部分の求人はあなたの想像通り、存在しません。
今回の記事では「薬剤師求人サイトにある求人は本当は存在しない」ことを実際に紹介会社に問い合わせて検証し、その理由を解説しました。
そもそも理論的におかしい求人件数
薬局の数より多い薬剤師求人
全国にある薬局の数は2019年度末で 6万171軒と、ついに6万軒を突破しました(厚生労働省データ)。今ではコンビニエンスストアより多いことは有名な話です。
ところが、薬剤師専門の求人サイトの中には、 50,000件以上もの求人数を掲載しているサイトがいくつも見られます。
確かに、薬局だけではなく、病院の数などをカウントすれば、それ以上の求人数にもなりうるのですが、はたしてそんなに求人があるのでしょうか。
見た目の求人数が多いのは中小規模の求人検索サイト
以前はwebサイトに掲載されている求人件数が多いことが、紹介会社のアピールポイントの一つとなっており、多くの紹介会社が実際存在しているよりはるかに多くの薬剤師求人を掲載していました。
大手薬剤師人材紹介会社が多くの求人件数をもつのは考えられうることなのですが、まれに明らかに多すぎる求人を公開しているのが中小規模の薬剤師人材紹介会社運営の求人検索サイトです。
なかには90,000件以上の求人件数があると謳っている検索サイトも数社あるほどで、正直疑わしいところでした。
また、正社員とパート、アルバイトを別々にカウントして、求人件数が実際より多く見せている求人サイトもあります。
(追記:2021.3.10)徐々に公開求人件数は適正数に改善されてきましたが、まだまだ改善が必要です。
薬剤師の求人はどのような流れでサイトに掲載されるのか
まず、「薬剤師求人サイトにある求人は実際は存在しない」その理由を解説するために、薬剤師求人が検索サイトに掲載されるまでの流れを簡単に解説したいと思います。
基本的に、薬剤師の求人募集は薬局や病院側の依頼もしくは薬剤師紹介会社側からの電話による提案で話は進みます。
薬局や病院側から求人の掲載を依頼する場合
人材の必要性を感じたら、多くの企業(薬局・病院)はハローワークや薬剤師人材紹介会社に求人の募集を依頼します。
以前は新聞に同封されている折り込みチラシにも求人が掲載されていましたが、今はほとんど見なくなりました。
ハローワークに求人を出す
ハローワークに求人を出す場合は、基本的に募集する企業(薬局や病院など)の担当者が管轄のハローワークに赴き、所定の書類に募集要項を記入して提出します。受理されたら、求職者がハローワークのパソコン端末で検索できるようになります。
最近では、インターネットでもハローワークにある求人を見れるようになったので、自宅でスマホやパソコンで気軽に募集案件を探せるようになりました。
薬剤師転職サイトに求人を出す
薬剤師の転職サイトに求人を掲載したい場合は、いずれかの薬剤師人材紹介会社に電話で問い合わせをします。
紹介会社が運営する求人サイトには「マイナビ薬剤師」、「リクナビ薬剤師」や「ファルマスタッフ」などがあります。
電話で紹介会社の担当者とのヒアリング後、紹介会社から契約書類が送付されて、記入の上、返信します。同時に、ネット上に掲載される募集要項や記載される薬局の写真などをアップデートした後、リリースされます。
1つの紹介会社の求人サイトに依頼することもあれば、複数の紹介会社に依頼することもあります。薬剤師は1つの求人検索サイトしか利用しない方もいるので、複数の検索サイトに募集を掲載した方が、多くの薬剤師の目に触れることができます。
薬剤師人材紹介会社側から求人の掲載を提案する場合
薬剤師人材紹介社は薬剤師を必要としている企業(薬局や病院)へ薬剤師を紹介することで、それに応じた報酬を得ます。
従って、なるべく自社の求人検索サイト上に求人募集を掲載しようと企業(薬局や病院)へ営業をします。
「御社は現在薬剤師を募集していませんか?」などと確認の電話を入れます。
紹介会社によってはFAXで薬剤師の紹介をする場合もあります。
多くの場合、紹介したい薬剤師が既にいて企業(薬局・病院)に問い合わせをするのですが、それと並行して、薬剤師募集を自社の求人サイトに掲載することを提案します。
あとは、薬局側から求人掲載の依頼をする場合の流れと同じで、電話ヒアリング後、契約締結、ネット上に掲載される募集要項を提出したあと、リリースされます。
ハローワークの求人情報から転用する場合もあり
古くからある中小規模の薬局や病院は古典的にハローワークに求人を出すことが一般的ですので、紹介会社は薬局側の求人を探す手段としてハローワークの求人情報を利用することもあります。
薬局側に転用する承諾を得るのが一般的ですが、紹介会社によっては無断で転用することもしばしば。
薬剤師の求人は存在しない説の検証
ここで本題に戻りますが、この「薬剤師の求人は存在しない説」を証明するために、実際に薬剤師専門の人材紹介会社運営の求人サイトに掲載されている求人募集に問い合わせをしてみました。人材紹介会社は外部リンクのまとめ記事を参照にしました。
紹介会社参照:https://ritouyakuzaishi.com/yakuzaishi_tenshokusite/
検証の方法
- 薬剤師専門求人サイトからランダムに3つのサイト(A、B、C)を選抜し、それぞれに掲載されている求人に問い合わせをした。
- 問い合わせ件数はそれぞれ10件とし、東京都近郊の募集案件からランダムに選択し、求人の有無を確認した。
- 問い合わせた薬局は会社全体としての募集ではなく、その店舗に対しての求人の有無とした。
- なお、A及びBはコンサルタントを有する人材紹介型の求人サイト、Cはコンサルタントを有さない検索特化型の求人サイトとした。
- 明らかに同じ店舗で正社員、パート・アルバイト、派遣社員と分けて募集している求人案件に関してはあらかじめ除外した。
検証結果
求人検索サイトの運営からの有効回答数をまとめると、以下の通りとなった。
【A社求人サイト】 東京都薬局8件、埼玉県2件を問い合わせたところ、実際に薬剤師を募集していた店舗は4店舗であった。
【B社求人サイト】 東京都薬局9件、埼玉県1件を問い合わせたところ、実際に薬剤師を募集していた店舗は3店舗であった。
【C社求人サイト】 東京都薬局7件、埼玉県2件、神奈川県1件を問い合わせたところ、実際に薬剤師を募集していた店舗は2店舗であった。
掲載されている求人募集の存在の有無はどのサイトにおいても10件中4件以下、つまり実際に募集しているのは40%以下となった。
また、複数店舗運営の薬局おいて、募集掲載のあった店舗の募集がなかった場合、その店舗とは別の店舗なら募集があるという企業の返答がほとんどでした。
以上の調査結果から、「薬剤師求人サイトにある募集は(ほとんど)存在しない説」が証明されたと言えるでしょう。
薬剤師の求人は存在しないその理由は
ではなぜ、掲載したはずの求人が存在しないのか、その理由をを解説します。
求人募集の掲載の取り下げが追いついていない
薬剤師求人が求人サイト上に公開されると、薬剤師側からの応募が始まります。
特に条件の良い求人は、人材紹介会社のエージェントがすでにサイトに登録している薬剤師に対し、優先的にメールやLINEで求人情報を送るので割と早く埋まってしまいます。
募集した店舗の求人が1つの求人サイトにしか存在しない場合は、その紹介した紹介会社が求人募集の掲載を削除すれば良いだけなのですが、複数の紹介会社の求人サイトに掲載されていた場合、採用が決まったことを他の紹介会社は知り得ません。つまり、企業側(薬局や病院)から採用が決まったことを伝えられていなければ、掲載と取り下げることはできません。
条件の良い求人に関しては他の紹介会社もすぐに紹介したがるので、求人の有無の確認の問い合わせた際に薬局側が募集を取り下げたことを把握しやすいのですが、あまり突出した魅力のない求人はいつまでも掲載され続けます。
もし仮に薬剤師の採用が決まったとしても、他の紹介会社はそのことを知り得ませんので、別の求人サイトで求人募集が掲載され続けることになります。
それをたまたま自身の条件に合致した薬剤師が問い合わせしてしまうのです。
釣り案件として利用されることも
魅力のある求人そのものを釣り案件として求人サイトに掲載し続けることも多い。また、保有求人件数を多く見せることで、薬剤師側に「この求人サイトはたくさん求人を持っているな」と思わせます。
そうすることで、その優良な求人や求人数に興味を持った薬剤師に問い合わせをさせます。
結果その求人は存在しないので、他のいくつかの求人募集を紹介するという流れ。
不動産賃貸業が賃貸物件を探す人に対して行う集客手法と同様ですが、人材紹介会社でも同様な手口を行う会社がある。
これは特に大手薬剤師紹介会社ではなく、中小規模の紹介会社に多い手法です。
大手紹介会社は知名度もさながら、多額の集客用予算を組んでいるのでこのようなグレーな手法は最近ではほとんど行いません。
では、どのように薬剤師求人を探せば良いのでしょうか
求人サイトの情報が正しくないとなると、一体薬剤師はどのように魅力ある求人を探せば良いのでしょうか。
自身で気になる薬局・病院に求人の問い合わせをする
この方法は昔からある方法で、電話やメールで問い合わせをする方法です。
デメリットとして、一つ一つ問い合わせをするので、膨大な時間を費やしてし舞うことが挙げられる。
そもそもホームページ上には募集情報が掲載されているものの、実際には募集していなかったり、要項が詳細に書かれておらず、聞かないと行けなかったりとかなり面倒。
また、金銭面の交渉が苦手な人は、安い賃金でまとめられてしまうことが非常に多い。
従って、知り合いのつてでもない限り、自身で直接薬局に求人の問い合わせをするといった手法はヤクラボでは勧めていない。
薬剤師紹介会社に登録してコンサルタントに情報提供してもらう
最近ではほとんどの薬剤師がこちらの方法を用いており、ヤクラボでもこちらの手法を勧めている。
紹介会社に登録すれば、先ほど説明した自分で求人を探すデメリットがなくなり、何より条件の良い求人が、検索サイト上に掲載される前に提供してもらえるというメリットがあります。
また、自分ではいざという時になかなかできない給料の交渉もしてもらえるので、金銭交渉が苦手な人は非常に助かります。
一つ気になる点として、求職している薬剤師は無料で利用することができるのですが、採用した薬局や病院側は人材紹介会社に成功報酬を支払わなければなりません。
そう考えると、採用する薬局側はこのような人材紹介会社は利用したくないのでは?と考えますよね。
確かに、人材紹介会社に支払うコンサルフィーが発生してしまうので、なるべく人材紹介会社を介せず薬剤師に応募してほしいという薬局があるのは事実。
しかし、そのような薬局は利益を給与に還元できないような運営が厳しい薬局だったり、ケチなオーナーが運営している可能性があります。
利益がしっかり出ていれば、人材紹介会社に支払うコンサルフィーは薬剤師という人材を確保できるのであれば、安いものです。
まとめ
今回の検証により、薬剤師求人検索サイトを利用して求人を検索しても、実際その店舗では薬剤師の募集をしていないことが多いということがわかりました。
もちろん、検索サイトを利用して薬剤師求人を探してもいいのですが、あくまで参考までに利用するに留めたいところです。
従って、もし転職活動をするにあたり、条件の良い案件を求めるのであれば、なるべく早く薬剤師紹介会社運営のサイトに登録し、いち早く情報を得る必要があります。
ちなみに、紹介会社に早めに登録する理由はコチラの記事『調剤薬局・病院で働く薬剤師の年収(給料)が低い理由とその解決策』でもご紹介しています。年収を高めるために、ご参考ください。
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